福神漬け

一瞬、マグロかと思った。

福神漬けが、ロッカーの前に落ちていた。

学食のカレーに付く福神漬け。なぜこんな所に落ちているのだろう。

 

徐に拾ってみる。

 

あ、うん。福神漬けだ。臭いも、福神漬けだ。

うちの学食の福神漬けは、市販のものよりも少し紅みがかかっていて甘い。

福神漬けを嫌っている私でもここの福神漬けは食べることが出来る。

 

福神漬けを持つ指に少し圧をかけてみた。

 

汁が滲む。臭い。ティッシュに包んで捨ててしまおう。

 

ティッシュなんて持ってない。

 

なので教室に行ってゴミ箱に捨てた。

福神漬けは食べ残されたカツサンドの上で、悲しそうに私を見上げている。

許せ。お前が私のロッカーの前に落ちていたのが悪いんだ。

 

来世はもっといい場所に落ちろよ。

そう思って、福神漬け特有の臭いがする手をポッケに突っ込んで、その場から立ち去った。

 

私が周りの冷ややかな視線と予鈴に気が付くのは、もう少しあとの事だった。

 

福神漬け』おしまい